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月が明る過ぎるせいだろうか。

妙に儚く見える少女との間に落ちる沈黙を恐れるように。

繋ぎ止めるように、普段なら決して話さない事を口にしていた。

「光の者は元より死を恐れない。自らの為ならば他の誰を犠牲にする事を何とも思わぬ。光の最たる帝であるならば、余計にそうでなければならんのだろう。だが俺には誰かが傷付く度失われる度、消えはしない痛みが残る」

これを忘れ慣れる事が光の名を掲げる者に必要ならば、自分には無理だと思った。

死を恐れるのは、黄泉へ行くのを恐れる事。

闇の女神の力を認めている事になる。

それでも、忘れてはいけないものはある筈なのだ。

清さなど、いらない。

人の命にこだわらない位なら、剣を取り地面に這いつくばってでも、ただ一人でも助けたいと願う。

「民は俺の一部だ。民を失うのは自分が傷付く事と同じだ。その傷は、決して癒えない。俺の思う帝は後の幾万の民の為に今数人を犠牲にする事を、仕方無いで切り捨てられる者であってはならない」

そうしなくてはならないなら。

犠牲をどうしても避けられないのなら、全てをこの身に刻み付けて。

魂を削ってでも、国の為に。

平和と、平安の為に。

綺麗事過ぎると、分かってはいるけれど。

「そうね。……とても難しいのね、色々な事が。でも、そうして悩んで苦しんで、それでも前を見ようとしている貴方はとても」

輝夜はそこで、ふっと息をついて微笑んだ。

「とても人間らしいと思うわ」

「どういう事だ?」

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