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数日を掛けて、輝夜と角鹿は筑紫の地に着いた。

領主の屋敷に行く前の森の中で、角鹿が荷の中から美しい衣装を取り出す。

「これを着て采女になりすまして頂くのですが……」

言い掛けて今日も男物の衣を着ている輝夜に目を止める。

「あの、一人で着れますか?生憎私はお手伝いは出来ませんが」

「ええ、大丈夫よ。少し待っていて」

困った様子の角鹿を安心させるように頼もしく頷いて、輝夜は衣装を手に木々の間に入って行った。

それでも角鹿は待っている間、気が気でなかった。

角鹿が知っている限り輝夜はいつも男の身なりをしていたから、采女の姿をどうしても想像出来ない。

しかししばらくして戻って来た輝夜を見て、そんな不安はすぐに消えた。

「……角鹿?どうしたの?」

「ああ、いえ。すみません。飛龍殿にも是非見て頂きたかったと思いまして」

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