19
数日を掛けて、輝夜と角鹿は筑紫の地に着いた。
領主の屋敷に行く前の森の中で、角鹿が荷の中から美しい衣装を取り出す。
「これを着て采女になりすまして頂くのですが……」
言い掛けて今日も男物の衣を着ている輝夜に目を止める。
「あの、一人で着れますか?生憎私はお手伝いは出来ませんが」
「ええ、大丈夫よ。少し待っていて」
困った様子の角鹿を安心させるように頼もしく頷いて、輝夜は衣装を手に木々の間に入って行った。
それでも角鹿は待っている間、気が気でなかった。
角鹿が知っている限り輝夜はいつも男の身なりをしていたから、采女の姿をどうしても想像出来ない。
しかししばらくして戻って来た輝夜を見て、そんな不安はすぐに消えた。
「……角鹿?どうしたの?」
「ああ、いえ。すみません。飛龍殿にも是非見て頂きたかったと思いまして」
- 169 -
[*前] | [次#]
しおりを挟む
ページ:
Reservoir Amulet