09
それから、ふと視線を落として続ける。
「これで逃れられるのならば、いっそ楽なのかもしれんがな」
しかし、そうは行かない。
大きな賭けに出る時というのに、負けるなんて思えない。
それは、誰より信じられない己を。
『私は貴方を信じてるわ』
迷い無く信じると言い切った、澄んだ声を思い出すからかもしれない。
「しかし、我々が動くのは向こうが動きを見せたらなのでしょう。それまでに、輝夜の身に何かあったらどうなさいます」
「どうも出来ないな。此処から無事を祈れ」
息を吐いて、飛龍は続ける。
「俺達は輝夜の探り出す情報が無ければ動けぬ。筑紫がはっきりと乱を起こすと示すまで、動く訳には行かんのだ。だからと言って何もせずに待っている事も出来ぬ。ならば今出来る事をやるしか無いだろう」
それしか、してやれる事が無い。
今も遠い空の下で務めを果たしている彼女に。
『私は死なないわ』
一瞬触れた指の温もりを信じて。
今宵もあの瞳を思い出させる月を見上げる。
- 179 -
[*前] | [次#]
しおりを挟む
ページ:
Reservoir Amulet