05
筑紫の領主の屋敷、その主の部屋で蛇集が低く声を発した。
「まだ集まって来ているのか」
志願する民を受け入れながら続々と規模を拡大して行く軍。
帝の為にと集う兵は今も尚、数を増しているのだ。
「はい。筑紫は帝の地位を奪わんとする反逆者という噂が流れ、風は明らかにあちらに吹いております」
淡々と漣星が応じる。
「こちらで独自に集めて来た兵の士気も下がり、向こうの軍に加わる為逃げ出す者もいます」
「……今更、後に退く訳には行かないのだ」
二人の様子を、蛇集に酌をしながら側に控えている輝夜が注意深く見る。
所詮小物、信頼する側近の言葉に蛇集が焦っているのは明らかだ。
事態は筑紫にとって、予想よりも遥かに悪い方へ動いている。
まさかこんな事になるとは、誰が考えられただろう。
帝の危機だと、民は自ら集まった。
一つの希望を守る為に、集い合ったのだ。
こんなにも、帝は大きいのか。
こんなにも、人を動かす力となるのか。
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Reservoir Amulet