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蛇集が顔色を変えて立ち上がったのを見て、輝夜は両手を揃えて頭を下げた。

「私は失礼致します」

何も言われない内に部屋から退出し、廊を足早に歩き出す。

(漣星があんな事を言い出すなんて……。本当は戦を止めたいと思ってくれたのかしら)

だとしたら、早く伝えなければ。

まほろばは遠いけれど。

蛇集が今まで隠していた弱さを見せ始めている今、自分もいつまでこうしていられるか分からない。

だから、その前に。

急いで自分の部屋へ向かっていた輝夜は、ふと足を止めた。

以前感じた事のある胸の高鳴りと、泣きたくなる程の嬉しさ。

(まさかあの人が今、こんな所にいる筈無いわ)

そう思っても無視出来ない、懐かしい気配。

輝夜は思わず、衣の裾を払いながら駆け出した。

いつも賢彰に報告の文を渡していた場所に、妙に明るい光があるように感じる。

やがて見えたその姿に、自分でも気付かない内に涙ぐみそうになっていた。

背の高い、堂々とした立ち姿。

振り向いた鋭く深い瞳と、不敵な微笑。

込み上げる様々な感情を抑え、輝夜は欄干にもたれている光の源へ近付いた。

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