09
「元気そうじゃないか、水晶の君」
手を上げた飛龍が、敵地にいるとは思えない位のんきに声を掛ける。
「どうして此処にいるの?飛……」
思わず名前を呼びそうになったが、飛龍が思い切り顔をしかめたので慌てて言い直す。
「ええと、鬼若かしら?」
「ああ。少し様子を見にな。思ったより上手くやっているようで安心したぞ」
「様子を見にって……」
輝夜は呆れて、相変わらずのんきそうな顔を見返した。
狙われていると知りながら、わざわざ自分から敵の本拠地にやって来るとは。
まほろばの角鹿達が泣いているに違いない。
「それに、賢彰にはそろそろ軍へ戻ってもらいたかったのでな。俺と交代した訳だ」
その言葉に、輝夜は飛龍を見上げた。
「大勢の民が軍に志願しているそうね。全て帝への期待が大きいからなんでしょう?」
「まあな。やはり同情を誘うには恋物語だな」
「……?何の事?」
尋ねると、飛龍がさらりと告げる。
「知らんのか?民を動かす為に、筑紫が帝の妃を攫い盾として帝位を奪おうとしている。そうでっち上げて噂を流したのだ」
「な……」
- 202 -
[*前] | [次#]
しおりを挟む
ページ:
Reservoir Amulet