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「これを機にって?」

首を傾げて輝夜が尋ねると、扶鋤は表情も変えずに言う。

「あれが君を妃にしたのだろう?君も苦労するだろうが、お互い愛し合っているなら止める事も無いだろう」

「た、扶鋤まで……」

輝夜は力無く呟いて顔を覆った。

「うう、私はこれでも大好きな人と結ばれて家庭を築く事を夢見ていた時があったのよ。それなのに、よりによってこんな……。現実って残酷だわ」

「何を今更女みたいな事を」

「……飛龍。人をいきなり押し倒しておいて、よくそんな事を言えるわね」

「ええっ!?」

輝夜の爆弾発言に、漣星が声を上げる。

「何も驚く事は無いだろう。夫婦なら当然だ」

何処までも冷静に扶鋤が言葉を添え、それから飛龍に向かって虫を追い払うように手を振った。

「もういいから痴話喧嘩なら余所でやってくれ。表で賢彰が待っている」

「そうか。では扶鋤、後は頼んだ。行くぞ、輝夜。漣星」

短く声を掛けて歩き出した飛龍を、戸惑うように漣星が見る。

輝夜は微笑んでその顔を見上げた。

「行きましょう。大丈夫よ、飛龍はこの世界を変える人だから」

輝く笑顔は、微塵も疑っていないから。

思わず信じそうになってしまう。

彼と、彼の周りの暖かい人々を。

彼の語る、暖かな未来を。





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