08
あれは確か、まだ彼女に出会う前に。
『光と闇に生きる帝、貴方はやがて世界を変えるでしょう。その為に私が行くから、待っていて』
(あれは、お前だったのか。輝夜)
世界を変える。
輝夜は何度もそう言った。
まだ何も出来ていない、成し遂げてはいないけれど。
その情けなさも、自分らしいのかもしれない。
自嘲気味に笑うと、細い指がそっと頬に触れた。
夢だと分かっていても、懐かしい感触は記憶の中のものと同じだ。
『会いに行くから、待っていて』
涼やかな声が囁いて、蒼い瞳を見詰め返す。
「ああ、有り難う。こんな俺に会いに来てくれた事、感謝する」
彼女に出会えた、ただそれだけで。
自分の人生が色付く気がする。
こうして再び姿を見れたのだから、思い残す事などありはしない。
それなのに、澄んだ瞳に再び胸が高鳴る。
本当に、綺麗だ。
一度位は、そう言えば良かった。
「……輝夜。俺は、お前を」
今更遅いけれど。
焼き尽くす程の炎が消えない。
「愛しく想っていた。共に生きる道は絶たれたが……お前を愛せて幸せだった」
薄れ行く夢に、もう一度呟く。
「愛しい夢を、有り難う」
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Reservoir Amulet