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事も無く告げられた言葉に、飛龍が一瞬黙り込んでから聞き返す。
「帰るって、何処へだ?」
「何寝ぼけた事を言っているの?豊葦原に決まっているじゃない」
「だが、俺は死んで此処は黄泉なんだろう?そんな簡単に帰れる訳が無い」
そう言うと、輝夜は真剣な表情をした。
「飛龍は、帰りたい?」
「……俺は」
「此処にいれば、確かに穏やかで苦しみも痛みも無いわ。でも、あの世界に戻れば悲しい事や辛い事もあるでしょう。貴方が此処を望むのなら、私は何も言わないわ」
しばらく黙り込んでから、飛龍が苦笑を洩らす。
「そんな事、俺には許されないだろう。俺は豊葦原を導く務めを背負っている。戻る方法があるのならば、俺は逃げはしない」
それは輝夜に話しているのか、自分に言い聞かせているのか。
「やるべき事は、まだ沢山あった。帝であるが故に皆から命ごと預かった、理想の国の姿がある。そこに近付けて行かねばならなかったのに、此処にいる限りは無理だ」
きっと忘れられない。
例え死んでも、自分が背負ったものの重さを。
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Reservoir Amulet