16


飛龍は少し言葉を探してから口を開く。

「俺には何も言えません。父上が政を疎かにしたのは確かですが、貴方を愚かで無能だなどとは言えません。俺だって同じ事を繰り返すかもしれません。今の豊葦原が荒れているのも先帝のせいだと、そう責めるのは容易いでしょう。しかし貴方を責められるのは本当は、貴方よりも上手く国を導く事の出来る者だけです」

だから何も言えない。

自分だって、まだ何も成してはいないのだから。

それを聞いた龍眼が、ふっと笑みを浮かべる。

「それこそがお前と私の違いだ。己が過つのではないかと分かっているのならば、それを正す事も出来るだろう」

後悔を含んだ寂しい声が辺りに響く。

「私には国はこうあるべきという理想はあった。しかし国を導く能力が無かったのだ。しかし帝になった時点で、能力が無い、力が及ばないでは済まされなくなる。私は理想だけではなく、それをいかに成すかを考えねばならなかったのだ」

責任がある故に、自身だけの問題では済まされなくなる。

帝の背には沢山の者の命が掛かって来るからだ。

- 264 -






[*前] | [次#]

しおりを挟む


ページ:



Reservoir Amulet