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甘い香りと頬をかする柔らかな感触に、ゆっくりと目を開ける。

(……これは、花?)

体が埋まる程の花に、一瞬此処が何処なのか分からなくなった。

(まさか、まだ黄泉の国なんて事は無いわよね?)

体を起こして隣を見ると、丁度飛龍も目を覚ましたところだった。

溢れ返る花々の中で視線が交わる。

(あ……)

何か言おうとして上手く声を出せずにいると、不意に飛龍が手を伸ばした。

そのまま腕を掴まれて引き寄せられる。

「……輝夜」

何が起こったのかわからないまま、気が付くと飛龍の温もりを体中で感じていた。

耳元で名前を呼ばれて、吐息が肌に触れる。

「輝夜」

飛龍が輝夜を抱き締める腕に更に力を込めた。

こうしていると、生きていると実感出来る。

呼吸をして感じる鼓動が、衣越しに伝わる熱が、冷え切った体を包んで行く。

だから今はただ、苦しい程に。

強く強く抱き締めて。

温もりを分け合って、生きて側にいると確かめたい。

もしも自分がいる事が、ほんの少しでも貴方の慰めになるのなら。

辛さも幸せも、全てを分け合いたい。

生きているから感じる様々な感情の彩りを教えて。

生きている事実の素晴らしさを確かめて。

今は何も言わず抱き締めて。

貴方と出会えて共にいられる。

大地の上でしか分からない幸せを、刻み付けて。





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Reservoir Amulet