05
花の褥【しとね】の中でしばらくお互いの温もりだけを感じていた飛龍と輝夜は、不意に聞こえた何かが落ちるような音に我に返った。
音がした方に顔を向けると、部屋の入り口に硬直している賢彰が立っていた。
その足元には、彼が落としたらしい花が花びらを散らしている。
気まずい沈黙が流れ、やがて賢彰が声を上げた。
「ぎ、ぎゃああああー!」
悲鳴が響き渡り、すぐに足音が近付いて来る。
「どうした、賢彰!」
「何があった?」
「何事ですか」
「どうかしたのかい?」
慌ただしく走って来た赤羽達に向かって、賢彰は震える声で言った。
「ひっ、飛龍殿と輝夜が……だだだ抱き合って……!」
「はあ?何言ってんだ」
「賢彰、落ち着いて考えろ。死んだ者同士が抱き合うなど出来る訳が無い」
「ほ、本当ですって!ちょっと見てみて下さいよ!二人こう、ひしと抱き合って……!」
賢彰が一番近くにいた角鹿で様子を再現すると、皆は顔を見合わせた。
「何か分からないけど、とにかく見て確かめてみようか」
「そうですね。取り敢えず、貴方は離れて下さい」
角鹿が賢彰を体から引き剥がし、それから皆で揃って部屋を覗き込む。
「……全くお前達、相変わらずのようだな」
「驚かせてしまったかしら」
花の中で微笑む二人を見て、一度体を廊に戻す。
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Reservoir Amulet