08
皆に黄泉の国での事を説明した後は、飛龍と輝夜が帰って来た祝いのささやかな宴が開かれた。
賑やかな時間はすぐに過ぎ、やがて夜が更けて皆は自室へ戻って行った。
しかし、飛龍はまだ一人眠れずに杯を傾けていた。
騒がしかった宴の名残が部屋に残っているようで、少しも眠くならない。
『私が言うべき事ではないかもしれないが、豊葦原を頼む』
時が経てば経つ程、まるであれが夢だったように思える。
『この身に宿る力の片鱗を、私の信じる貴方に捧げましょう』
杯に満たした酒に、空の月が映り込むのが見えた。
『お前の命はまだ消えてはいない。月の姫の祈りが間に合ったからだ』
何となくじっとしていられなくなって、飛龍は杯を置くと外に出た。
足が動くままに歩いて、ふと気付くと水が流れる音が聞こえて来た。
(水か。輝夜が好きだと言っていたな)
以前の会話を思い返して微笑み、呼ばれるようにそちらに足を向ける。
やがて水が流れ込む小さな泉を見付けて、思わず立ち止まる。
誰もいないと思っていた泉には、一人の少女の姿があった。
(輝夜……)
髪を下ろして衣を身に付けたまま、水の中で佇む輝夜は普段とは別人のようで。
『私も許されぬ身でありながら、地上に焦がれ人に焦がれる者でございます』
闇の女神にそう語り掛けた、大人びた横顔を思い出させる。
あれが夢ではなく現実で、輝夜が本当に言った事なら。
彼女は、一体。
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Reservoir Amulet