09


飛龍が見詰める中で、輝夜は静かに舞うように体を動かした。

同時に水が煌めき、輝いているように見える少女の体を取り巻く。

月光に輝く水を纏うその姿はこの世のものとは思えない程美しくて、何故か胸が痛んだ。

『会いに行くから、待っていて』

夢で会った輝夜の声が不意に響いたのは、彼女が今着ている衣に気が付いたからかもしれない。

あの輝く衣は、夢の輝夜が纏っていたものと同じに見える。

何故だろう。

声を掛けてしまえばいいのに、何も言えない。

ほんの数歩先にいる筈の彼女が、とても遠くに感じる。

しばらく目を離せずに見詰めていると、輝夜がふとこちらを見た。

驚いたように目を見張り、それから柔らかく微笑む。

「どうしたの、飛龍。こんな時間に」

「……お前こそ、何をしているんだ?」

いつも通りの輝夜に、少しほっとしながら歩み寄る。

輝夜も近付いて来て、二人並んで泉のほとりに腰を下ろす。

水に手を浸して、輝夜が言う。

「話をしていたの」

「水とか?」

「ええ。水は月を映すから、昔から友達だったのよ。飛龍は、こんな時間にお散歩?」

「ああ、まあな。色々考えていた」

「色々?」

真っ直ぐな蒼い瞳に見詰められて、飛龍は少し黙ってから話し出す。

「黄泉の国で父上に会って、俺のやるべき事や成すべき事が前よりはっきりした。帝には迷いや疑いも必要なのだと気付く事が出来た。……死んでみて分かるなんて、おかしな話なのだろうが」

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