14
輝夜は小さく息をついて、飛龍と重ねた手に僅かに力を込める。
「神は永遠の時を変わらずに生きる。けれど、人は違う。刹那の時を変わりながら生きて行く。私がそれを尊いと思えるようになったのも、誰かを……大切に想うのも人になってからの変化だわ。私はもう、人なのかしら」
大御神は言った。
この地上で人に成り果てたと。
「ねえ飛龍。私はもう人間と同じなのかしら。貴方と、同じ……」
飛龍はしばらく輝夜を見詰め、当然のように答える。
「そうだな。少し気が強くて素直じゃない、何処にでもいる小娘にしか見えないな。大体お前が月の女神月読だなんて、教えられたって分からんぞ」
「少し引っ掛かる言い方だけど……。でも、有り難う」
「お前は人になりたかったのか?」
訊かれた輝夜は、少し考えてから口を開いた。
「そうかもしれないわ。だって人になれたら、見る世界は飛龍と同じだから。ずっと貴方の世界にいられるでしょう?」
「馬鹿だな。人だろうが神だろうが、お前は俺の民の一人の輝夜だ。その事に変わりは無いさ」
「……有り難う」
呟くように言った輝夜の表情は、伏せられていてよく見えない。
「しかし、そんな事もあるのだな。永遠を生きる神が、刹那の人に憧れるなど」
「永遠よりも、大切なものがあるのよ」
それが何なのか、訊きたいけれど訊けない。
ただ重ね合った手が熱を帯びて。
互いの息遣いまで聞こえて来る静寂の中では。
もう言葉はいらない気がした。
『言葉は無くても、こうしているだけで側にいると分かるのはとても尊い事なんだわ』
恋しい故の痛みを知り、眠れない夜を数えたから。
こうして側にいられる尊さを知った。
大地の上を二人、手を繋いで駆け抜けて。
そっと微笑み合って心を重ねる。
こんな時は、いつまで続くのだろうか。
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