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輝夜は小さく息をついて、飛龍と重ねた手に僅かに力を込める。

「神は永遠の時を変わらずに生きる。けれど、人は違う。刹那の時を変わりながら生きて行く。私がそれを尊いと思えるようになったのも、誰かを……大切に想うのも人になってからの変化だわ。私はもう、人なのかしら」

大御神は言った。

この地上で人に成り果てたと。

「ねえ飛龍。私はもう人間と同じなのかしら。貴方と、同じ……」

飛龍はしばらく輝夜を見詰め、当然のように答える。

「そうだな。少し気が強くて素直じゃない、何処にでもいる小娘にしか見えないな。大体お前が月の女神月読だなんて、教えられたって分からんぞ」

「少し引っ掛かる言い方だけど……。でも、有り難う」

「お前は人になりたかったのか?」

訊かれた輝夜は、少し考えてから口を開いた。

「そうかもしれないわ。だって人になれたら、見る世界は飛龍と同じだから。ずっと貴方の世界にいられるでしょう?」

「馬鹿だな。人だろうが神だろうが、お前は俺の民の一人の輝夜だ。その事に変わりは無いさ」

「……有り難う」

呟くように言った輝夜の表情は、伏せられていてよく見えない。

「しかし、そんな事もあるのだな。永遠を生きる神が、刹那の人に憧れるなど」

「永遠よりも、大切なものがあるのよ」

それが何なのか、訊きたいけれど訊けない。

ただ重ね合った手が熱を帯びて。

互いの息遣いまで聞こえて来る静寂の中では。

もう言葉はいらない気がした。

『言葉は無くても、こうしているだけで側にいると分かるのはとても尊い事なんだわ』

恋しい故の痛みを知り、眠れない夜を数えたから。

こうして側にいられる尊さを知った。

大地の上を二人、手を繋いで駆け抜けて。

そっと微笑み合って心を重ねる。

こんな時は、いつまで続くのだろうか。





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