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「貴方ならそう言うと思っていたわ。でも、一人では駄目よ。私も一緒に行くわ」
「しかし、これは神と人との戦いだぞ。お前は……」
「私はもう神の側には戻れないわ。それなら貴方の側にいたい。私は人間ではないけれど、人を豊葦原を愛しているのは私も同じなのよ」
飛龍はしばらく輝夜を見詰めてから苦笑した。
「我ながら無謀だと思うのだが、反対しないのだな」
「貴方が無謀なら私もそうよ。先に天神に喧嘩を売ったのは私だもの」
「それもそうだな」
笑い合う一瞬でさえも愛しくて尊いのは、月の光に照らされる姿があまりにも綺麗だからだろうか。
「……大丈夫よ」
やがて輝夜がふっと呟いた。
「人の強さを、私は知っているから。それは一人の神の心を動かす程激しくて強い。私は信じているわ、人を貴方を。だから貴方も信じて。信じる事は人の持つ、運命さえも時に変えて行く大いなる力よ」
「ああ、そうだな」
飛龍は目を閉じて静かに続ける。
「不思議だな。無謀だと分かっている筈なのに、自分でも負ける気がしない。多分、お前がいてくれるからだな。だから……」
「……?だから?」
聞き返されて、飛龍ははっと目を開けた。
「いや、何でもない。今言うべき時ではないだろうから」
「今はいけないの?」
首を傾げた輝夜に微笑して、軽く息をつく。
「ああ、今は駄目だ。でもいつか、必ず伝える。その時は、聞いてくれるか」
「ええ、分かったわ」
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