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「……聴いてくれるか、輝夜」
「ええ」
頷いた輝夜が、笛を構えた飛龍に合わせてすっと立ち上がる。
静かな夜の庭に、ほんの一時満ちる笛の調べ。
それに身を委ねると、体は自然に動いてくれた。
心が何処までも落ち着く感覚は、水の流れに似ていて。
それはこの笛を奏でる飛龍という人間の、本当の姿を表しているのかもしれない。
いつもふざけていて、限り無くいい加減に思えるけれど。
本当はとても優しくて寂しくて。
人の痛みを全て自分のものにしてしまう人。
それでいて自分が慰めを必要とする時、そんな事は全く感じさせない不器用な。
強くて弱い人。
自分はそんな貴方の支えに、ほんの少しでもなれているのだろうか。
笛を奏でる飛龍と舞を踊る輝夜の目が合った。
眼差しを交わした瞬間、時が止まったように思えた。
刹那を生きる人が、永遠に焦がれるその理由を。
熱く身の内を駆け巡った感情が輝夜に教えた。
見詰め合う時間に、世界には二人しか存在しないような錯覚に陥って。
このまま時さえ止まれば良いと願ってしまう。
かつて見ていた、叶わぬ筈の夢。
気付かない方が、或いは幸福なのかもしれないけれど。
一度分かってしまったら、もう戻れない。
その甘さと輝きが、どんな切なさも至福に変える。
もう引き返せない、気付いてしまったなら。
抱き締めてくれた力強い腕、触れ合う温もり。
貴方だけ、感じていたい。
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Reservoir Amulet