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「時間を止めたの。飛龍達が帰るまで、この世界は私の治める夜のまま。永遠とはいかないけれど、しばらくならこの世界を、大御神にも壊させたりしないわ」

「……有り難う。これで安心して天上に向かえる」

「ええ。それから皆にも私の加護を。これで人でも天神の前に立てる」

驚いて見詰めていた漣星が、しみじみと呟く。

「やっぱり、君は神なんだね。輝夜」

それから飛龍の方にちらりと目を向けて続ける。

「だけど、良いのかい?君が普通の女の子なら、誰か一人の為に生きても構わないだろうけど……。でも、君は神だ。神なのにその力をこうして使ってしまっても、大丈夫なのかい?」

飛龍も他の皆も、何も言わないまま輝夜を見詰めた。

輝夜は、ふわりと柔らかな笑みを浮かべて答える。

「私は力を貸すだけだから。私の大切なものの為に自分に出来る事をするだけ。世界を取り戻すのは貴方達、強く願う人間よ。私がこの世界を無くしたくないと思ったのも人のおかげだった。だからきっと、大御神の心だって動かせる」

後悔は無い。

神も人も無く、そこにあるのはそれぞれの願いなのだと貴方が教えてくれた。

「信じているわ。私は貴方に賭ける。私を失望させたりしたら怒るわよ?」

冗談のように軽い口調で言った輝夜の視線を受けて、飛龍も微笑む。

「お前がそう言うなら、きっと何とかなるだろう」

何の確証も無いけれど、信じる力が人の強さなら。

信じてくれる誰かが側にいるのは、何よりも強い力となる。

手を伸ばして綺麗な髪に触れた一瞬、見交わす瞳はいつもとは違っていた。

言葉は無くても、そこに宿る光が秘めた想いを語るから。

輝夜が頷いて、皆の方に向き直った。

「行きましょう、皆で」

神の元へ。

争いを終わらせ、人の手でこの世界を掴み取る為に。





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