16
「時間を止めたの。飛龍達が帰るまで、この世界は私の治める夜のまま。永遠とはいかないけれど、しばらくならこの世界を、大御神にも壊させたりしないわ」
「……有り難う。これで安心して天上に向かえる」
「ええ。それから皆にも私の加護を。これで人でも天神の前に立てる」
驚いて見詰めていた漣星が、しみじみと呟く。
「やっぱり、君は神なんだね。輝夜」
それから飛龍の方にちらりと目を向けて続ける。
「だけど、良いのかい?君が普通の女の子なら、誰か一人の為に生きても構わないだろうけど……。でも、君は神だ。神なのにその力をこうして使ってしまっても、大丈夫なのかい?」
飛龍も他の皆も、何も言わないまま輝夜を見詰めた。
輝夜は、ふわりと柔らかな笑みを浮かべて答える。
「私は力を貸すだけだから。私の大切なものの為に自分に出来る事をするだけ。世界を取り戻すのは貴方達、強く願う人間よ。私がこの世界を無くしたくないと思ったのも人のおかげだった。だからきっと、大御神の心だって動かせる」
後悔は無い。
神も人も無く、そこにあるのはそれぞれの願いなのだと貴方が教えてくれた。
「信じているわ。私は貴方に賭ける。私を失望させたりしたら怒るわよ?」
冗談のように軽い口調で言った輝夜の視線を受けて、飛龍も微笑む。
「お前がそう言うなら、きっと何とかなるだろう」
何の確証も無いけれど、信じる力が人の強さなら。
信じてくれる誰かが側にいるのは、何よりも強い力となる。
手を伸ばして綺麗な髪に触れた一瞬、見交わす瞳はいつもとは違っていた。
言葉は無くても、そこに宿る光が秘めた想いを語るから。
輝夜が頷いて、皆の方に向き直った。
「行きましょう、皆で」
神の元へ。
争いを終わらせ、人の手でこの世界を掴み取る為に。
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