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「……輝夜」

驚いたように飛龍が名前を呼ぶと、蒼い瞳を光らせた輝夜が向き直った。

「飛龍も言い返さなくていいの?弱き者なんて言われているのよ。大切な人達を貶められたら、頭に来るでしょう?」

本気で怒っている様子の輝夜に、飛龍は苦笑を浮かべた。

「お前は本当に、何処にいても変わらんな」

「ま、確かに頭に来るよね。力では神には到底及ばないのは事実だけど、心とか絆の強さまで見くびられるのはね」

漣星が同意して太刀を抜くと、賢彰も続いた。

「そうです、そうです!飛龍殿と輝夜は、誰が見たって相思相愛なんですからね!」

「何しろ一緒に死んで一緒に生き返る位だしな」

「……そういう問題なのでしょうか」

「とにかく、やるべき事は一つだ」

全員が武器を構えると、やがて大御神の声が響いた。

『良かろう。月読よ、そなたの信じる人の強さとやら、示してみせよ』

その途端に、それまで光に満ちていた天上に影が差した。

それは少しずつ、辺りを蝕むように広がって行く。

「これは……!」

はっとして呟いた輝夜に応じるように、全てを包む声が言う。

『人の世の繰り返される争いを憂い、照らす事を厭い、姿を隠そうとする天照【あまてらす】を留めてみせよ』

「それを成し遂げた時には、確かに豊葦原を再び人の手に委ねて下さいますか」

『良かろう。そなた一人で無理だった事が、人と共にある事で成せたならば』

輝夜は唇を噛み、頷いた。

「では必ず、成してみせます」

例えどんなに難しい事だとしても。

人の手に再び世界を取り戻す為ならば。

成してみせる、必ず。

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