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墨を垂らしたかのように深みを増す闇を見ながら、飛龍が目を細めた。

「これは、覚えがあるな」

「ええ。以前貴方が飲み込まれた闇……あれは私の姉上が大地を照らす事を拒んだから生まれたの」

「輝夜の姉君って事は、昼を治める天照だね」

「そうよ。本当に優しい方で、だからこそ争いを嘆いて……天の岩屋戸の中に姿を隠してしまおうとしているの。太陽が隠れたら、全てが闇に飲まれるわ」

輝夜は目を伏せて続ける。

「この前私が一度戻って来た時にも何とか留めようとしたのに、出来なかった……」

話している間にも、暗黒の気配は益々大きく広がって行く。

弓を握り直し、輝夜が顔を上げる。

「お願い、力を貸して。私は今度こそ姉上を留めてみせる!」

「分かった。俺達で天照を抑えよう」

武器を取り、闇が溢れ出す源へと視線を向ける。

矢を構える角鹿に、太刀を手にしている扶鋤が言う。

「角鹿、とにかく射掛けろ」

「はい」

「お前の弓の腕は大したもんだしな。今は輝夜と角鹿の弓矢が頼りだ」

立ち向かう相手への突破口を切り開けるのは、弓矢しか無い。

矢が放たれる瞬間を逃さずに、闇の中心へ刃を向ける。

その途端に深くなる暗黒に、賢彰は唇を噛む。

(くっ……)

飲み込まれると思った時、空を裂いて矢がすぐ横を飛んだ。

矢を中心に一筋の光が生まれ、微かな灯りとなる。

思わず振り向いた先には、新たな矢をつがえる輝夜の姿があった。

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