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「忘れる……?」

飛龍は呆然と呟いた。

彼女が神だと知った時から、心の何処かでずっと別れは予感していた。

自分だけのものにしたいなど過ぎた願いだと覚悟していた。

それでも、共にいた確かな時間があるなら。

想い出を抱いて生きて行けると思ったのに。

それすらも許されないのか。

神と人とは、そんなにも遠いのか。

「飛龍、約束を果たせなくてごめんなさい」

気付くと、輝夜が真っ直ぐに見詰めていた。

他の皆は気遣うように、少し離れて見守っている。

「でも、私は忘れないわ。貴方が教えてくれた事を、絶対に」

「……どうしても、駄目なのか」

此処に至って、みっともない程に声が震えた。

このまま別れてしまえば、彼女の記憶すら消えてしまう。

今の自分を創ってくれている、大切な大切な。

「そんなに悲しまないで。別れは終わりではないわ。新しい始まりよ」

輝夜の手が伸びて来て、そっと頬に触れた。

「貴方が守った世界が貴方を待っているわ。そして、これから貴方には沢山の出会いがあるでしょう。きっとたった一人の大切な人が現れる。その人と、恋をして愛し合って新たな命を繋いで」

慰めてくれる優しい瞳の方が、泣きそうに見える。

そう自惚れても良いだろうか。

今、この時だけは。

「貴方が私を忘れても、私は……」

言い掛けて言葉を切った輝夜が、改めて言い直す。

「ずっと願っているわ。貴方の幸いを。私はずっと忘れない。共に過ごした日々を、駆け抜けた大地を。例え離れても、想いは世界の至る所に息衝いているわ」

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