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「用があって夜に飛龍を訪ねると、あいつは大体月を見てるんだ。普段絶対見せないような表情で」

まるで、そこに誰かの姿を見出すように。

その横顔は何処までも静かで、だから切なさや痛みが伝わって来るようで。

けれど、それがいつからかは分からない。

気付くともう、夜毎に月を見上げる飛龍がそこにいた。

「しかし、彼らしくないですね。飛龍殿ならば周囲の反対や身分の差など気にせず攫って来てしまいそうなものですが。風流に月など眺めずに」

「そうだな。今更俺達の反応など、気に掛ける筈も無いだろう」

腕組みをして扶鋤が言った。

「どんな姫でも、あいつをしつけてくれるなら邪魔はしない」

「ええ、そうですね。妃を持てば、飛龍殿も少しはしっかりするでしょうし」

「さあ、それはどうだか」

口に出さなくても、三人思う事は同じだ。

幸せが訪れるように。

いつもふざけているようでも、心の中では誰よりもこの豊葦原の平和を願う者だから。

高い位置に座す孤独を満たす存在が現れればいい。

支え合えるたった一人と、出会えればいいのに。





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