06


街で暮らす人々の表情は明るい。

活気に溢れた生活の様子を確かめながら歩く。

そしてふと、店先に並ぶ髪飾りが目に入った。

思わず立ち止まり、手に取る。

青い花の髪飾りに、どうして此処まで心が動くのか分からない。

何となく似合いそうだと思ったのに、一体誰を思い浮かべたのかさえ。

「いらっしゃい!兄さん、想い人に贈り物かい?」

気が付くと、店の人が笑って話し掛けて来ていた。

「あ、いや……」

「いいねえ、若いってのは。あたしも若い頃は、そういうのを持って妻問いにやってくる人を待っていたもんだよ」

朗らかに思い出を語り出されて何となく断れなくなり、結局手にした髪飾りを買って店を後にする。

贈るあてなど、無いというのに。

何かが胸から欠け落ちているような気がして落ち着かない。

どうしてなのだろう。

歩き続ける内に、いつしか街の外れの方まで来ていた。

後ろを振り向いても、誰も追って来る気配は無い。

最近は諦めたのか、何も言わずに抜け出しても捜しに来る者などいない。

(……本当にそうだったか?)

『もう、飛龍!また黙って抜け出して。捜す方も大変なのよ』

(いつも誰かが懲りずに追い掛けて来て、文句を言い合いながら並んで歩いていたような……)

どうしても拭い切れない違和感が、胸を支配する。

誰を、誰を待っているというのか。

- 335 -






[*前] | [次#]

しおりを挟む


ページ:



Reservoir Amulet