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少しして、賢彰と漣星が飛龍の部屋を訪れた。

「あれ、あの娘はいないんですか?」

室内を見回して尋ねた賢彰に、飛龍が答える。

「少し前に隣の部屋に荷を置きに行ったのだが、そういえば戻らんな」

「じゃあ僕、ちょっと様子を見て来るよ」

そう言って漣星が出て行くと、賢彰は腰を下ろして飛龍の顔を探るように見た。

「……何だ、賢彰」

視線に耐えかねて声を掛けると、意味有りげな笑みが帰って来る。

「いえ、恋をしている飛龍殿なんて滅多に見られませんから。でも駄目ですよ、愛しい人を放っておいちゃ」

賢彰は諭すような口調で続ける。

「初めて来た場所で、心細く思ってるかもしれないでしょう?大体いきなり連れて来たんですから、お互いを知り合う時間とか愛を育む時間とか必要ですよ。さっ、僕達に構わず愛しい人の側へ行ってあげて下さい」

「何を勘違いしているのか知らんが、一番最初に連れて行けと言って来たのはあいつの方だぞ。それに此処に来るのも初めてではない」

「そうなのか?何処かで会った気がすると思っていたが」

納得した様子の赤羽に、角鹿が考え込みながら言う。

「けれど、おかしいですねえ。宮仕えしていて主上と接触出来る者の数は限られていますし、全て我々が覚えている筈ですが」

「こいつの事だ。何処で何をしているか分かったものじゃないだろう」

常に冷静な扶鋤が口を挟んだ時、漣星が戻って来た。

「あの娘、寝ちゃってたよ。冷えるといけないから上掛けを掛けて来たけど」

「そうか。ならば丁度良い」

「ち、丁度良いって、まさか寝込みを襲う気じゃないでしょうね!?主上、貴方という人は!」

「……男の風上にも置けないな」

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