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立ち去る足音が聞こえなくなってから、赤羽は口を開いた。

「扶鋤、気付いたか?あいつ、かなり怒ってるよな」

「…………」

扶鋤はしばらく黙って揺れる灯火を見詰めていたが、やがて呟くように言った。

「昔から思っていた事がある。飛龍は途方もなくいい加減な奴だが、人の命だけは大切にする」

「それは俺も知ってるぜ。戦場でも兵を一人でも多く逃がす為に、自分は最後まで残るんだ」

「部下を盾にするような奴に比べたら感心すべき事なんだろうが……帝としては、どうなんだろうな。いつか仇にならなければ良いが」

何しろ宮中は多くの陰謀で満ちているような場所だから。

それに飛龍は豊葦原を導く帝だ。

一つ一つの命にまでこだわっていては前に進めない事もあるだろう。

「今回もまた無茶をしなけりゃいいんだが」

「領主は小物だ。所詮敵わないだろう」

どんなに愚かに思える男でも、帝である事には変わらない。

最初から敵う筈が無い。

どんなに隠していても輝かしい、その存在の前には。





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