04


夜が更けてから、輝夜は両親に向かって両手を揃えて口を開いた。

「父さん、母さん。私、この村を出て行こうと思うの」

突然の言葉に、二人は黙ったまま顔を見合わせる。

「やらなければいけない事が、会わなければいけない人がいるの。何処の誰とも知れない私を拾って育ててくれた事、心から感謝しているわ。何のお返しも出来ないけれど、勝手を許してほしいの」

怒鳴られるかと思ったが、母親は不意に泣き笑いのような表情をして言った。

「いつ言い出すかと思っていたよ」

「……え?」

「最近のお前を見てれば分かるよ。これでも親なんだからね」

父親も頷いて輝夜を見る。

「初めからそのつもりだった。竹林の中で光る衣に包まれて倒れているお前を見付けた時から、これは天からの預かりものだとな」

「父さん、私はただの娘よ」

輝夜がそう言うと、母親も首を振った。

「お前を育てると決めた時、二人で決めたんだよ。この子はいつか天へ帰って行く。それまでは娘として出来る限り育てようって」

懐かしむような母親の目に、ふと寂しさが入り込む。

「お前が大きくなって、それも少しずつ遠くなって行って。お前がずっと此処にいて婿を迎えて子が出来る、なんて考えなかった訳じゃないけどね。今の輝夜の話を聞いても驚きなんて無いんだよ」

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