09


その次の満月の夜に、輝夜は両親にだけ別れを告げて旅立った。

友達や世話になった人に挨拶をしないのは寂しかったが、なるべく静かに後を残さぬように出て行きたかった。

自分の存在は、少しでも早く人々の胸から消えた方が良い。

そう思って、旅の支度をしている間も表向きはいつも通りの生活を続けた。

そして両親以外には誰にも知らせないまま旅立ちの日が来た。

人と人との出会いは泡沫、いずれ忘れ去られるだろう。

別れは辛くても、その痛みは時と共に消えて行くものだから。

輝夜は村を出る時、足を止めて振り向いた。

月の光に照らされた、小さな村。

自分が約十年の時を過ごした村。

その風景を瞳に映して口を開く。

「私は今宵、この村を出て行きます。しかし、これからもこの地に変わらぬ加護を」

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