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輝夜は立ち上がると、市で手に入れた男物の衣に着替えた。

背中に下ろして束ねていた髪を解いて、高い位置に結い直す。

こうすれば一目見ただけでは女だとは分からないだろう。

高千穂の領主は女を攫っていると言うから、こうして男の格好をしていれば少しは安全になる。

再び懐剣を懐に仕舞い込んで、小さく息をつく。

「本当に、早く平和になるといいのに……」

信じさせてほしい、まだ捨てたものじゃないと。

この豊葦原は、世界は美しいと。

焚き火を見詰めながら、今宵も遥か思いを馳せる。

月影の冴える地上を、この足で進んで。

身勝手な理由で夢に縋って、貴方を捜して。

まだ諦めたくない一心で、会いに行くから。

どうか待っていて。

見上げた空に浮かぶ月は宵闇、もう夜は深い。

人間のささやかな感情など飲み込まれてしまいそうな程に。

深い夜の静寂に、一つの呼気が溶けて行く。





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