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そんな筈は無い、と輝夜は唇を噛む。
新たな帝の即位に希望を抱く者もいるが、それでも高千穂の荒廃は深い。
荒御魂が出没し領主が悪行を尽くすのを見たり聞いたりしたら、帝を恨んでしまうのも仕方無いのかもしれない。
しかしそれは先帝の話であって今の帝の事では無い。
そしてこの噂を語る人々のほとんどは、本当の帝の姿を知らないだろう。
輝夜は足を止めて、遠くの空に目を向けた。
あの空の下に、まほろばがある。
まほろばの地の宮に、帝はいる筈だ。
会うなんて容易ではない。
一目姿を見る事さえ不可能に近いだろう。
でも、それでも少しでも近付けば、側に行けば或いは。
そんな儚い期待を抱いて、輝夜は旅に出たのだ。
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Reservoir Amulet