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「こんな世の中だけど、旅の人でも本当に親身になってくれる人がいると思うと嬉しいよ。最近、時々此処に来る旅の人がもう一人いてね。仕事を手伝ってくれたり子供と遊んでくれたりして、本当に助かっているよ」

「そうなんですか」

その話を聞いて、胸が暖かくなる気持ちになった。

この地の領主のように自分の事しか考えない人間もいるけれど、そうではない人も確かにいる。

そういう人がいる限り、この世界もまだ慈しむべきものだと思えるから。

「あ、そういえば此処に来る途中の街で聞いたんですけど、領主の屋敷には何か妙な術が掛けられていて簡単には中に入れないって本当ですか?」

輝夜の質問に、肯定の仕草が返って来る。

「本当だよ。この村の男達が連れ去られた娘を取り戻そうと乗り込んで行った事があるけど、屋敷の中に入れないまま捕まっちまったんだ」

「そうですか……。有り難うございました」

頭を下げて人の良い老婆と別れ、村から出る。

木の生い茂る森の中に入って、領主の屋敷の方に目を向けた。

あちらの方向から、不思議な力の気配を感じる。

屋敷に妙な術が掛かっているというのも本当の事なのかもしれない。

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