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青年の背中が見えなくなった後も、輝夜はその場を動けなかった。

受け取った弓を握り締めたまま、しばらくその場に立ち尽くす。

囲まれて攻撃を受け、思わず弓を取り落とした時に転んでぶつけた所が痛む。

でも、これだけで済んで良かったのだろう。

あの人が来てくれなければ、どうなっていたか。

通り掛かって、助けてもらわなければどうなっていたか。

「…………」

自然に二人で地面に倒れ込んだ時の事を思い出し、顔が熱くなる。

あんなに近くで男の人の顔を見たのは初めてだった。

呼吸を感じて、体の熱が伝わって。

それなのに。

「あの人……多分私が女だって気付いていなかったわ」

男装をしているから仕方無いとはいえ、全く気付かれないのも何だか複雑だ。

当分の間は立ち直れなくなりそうな自分を何とか励まし、衣の汚れを払う。

それから再び青年が立ち去った方を見た。

(さっきあの人に会った時、何だか吸い込まれそうな位深くて大きい……そんな気がしたんだけど、気のせいかしら?)

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