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「ん?何か言ったかね」

「いいえ。何でもありません」

老婆に首を振ってから、気付かれない程微かに自嘲の笑みを浮かべる。

この高千穂に来てしばらく経つが、未だに領主の屋敷に張られた結果を解く方法は見付からないままで。

領主が屋敷を出る機会を狙おうかと思ったが、一向にその時は訪れない。

暗殺者を恐れての事だろう。

(全く、ああいう輩は悪知恵だけは働くから大したものだ)

頭を下げて老婆と別れ、歩き出しながら空を見上げる。

(それでも、理不尽に屈しない者もまだいるのだな)

自分の危険を省みずに、目の前の誰かに手を差し伸べられる者が。

そういう存在がいる限り、捨てたものではないと思う。

時として世界は残酷で、絶望しそうにもなるけれど。

民から、自分は任されているのだ。

豊葦原の大地を治め、導けと。

だから、応えなければならない。

己の全てを賭けて、己の命を燃やして。





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