21
「寝たんじゃなかったのか?」
ひかりはその問いには答えなかった。
黙ったまま勇の隣に立ち、同じように手すりにもたれる。
「雨の夜は静か過ぎて……かえって眠れないから」
ぽつりと呟いたのは、先程の答えだろうか。
雨音が響く中、ひかりは再び言葉を口に乗せる。
「もしかして、勇が先生になりたいのは谷川さんの影響?」
「どうして、そう思った?」
「何となく。分かる気がする。いい先生なんだなって」
「そうか」
ひかりが隣で微笑んだのが、気配で分かった。
「きっと、勇ならなれるね。とってもいい先生に」
「お前、本当にそう思ってるのか?こんな俺が……本当になれるって」
一度、死にたいとさえ思った自分が。
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Reservoir Amulet