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少し沈黙した後、溜息と共に声を出す。
「そうだな。何でだろうな」
「……ごめん。訊いちゃいけなかったみたいだね」
申し訳無さそうに謝った隼に、不思議と不快感は生まれなかった。
「いや……。お前の方こそどうなんだ?」
「僕は、父さんが今捕まってるんだ。お酒を飲んで暴れて、遂に傷害事件を起こしちゃってさ。今は服役中なんだ。だからこれは、家の手伝い」
あっさりと語られたが、その内容はとても重いものだった。
「……悪い。訊かなきゃ良かったな」
「ううん。そんな事無いよ」
気遣うように言った勇に、隼は明るく応じた。
「空を見てると、自分はなんてちっぽけな存在だろうって思うけど。同時にこの広い世界に一人しかいない、尊い存在だとも思うんだよ」
静かでいながら確信の込められた言葉は、もう何度も自分の中で繰り返したもののようだった。
「僕の父さんも同じ。この世に一人の大切な父親だから。せめて息子の僕だけでも良いところを覚えていて、信じて誇りに思っていたいんだ」
誇りに思いたい。
この世に自分が生きる切っ掛けをくれた親を。
信じていたい。
誰が何と言おうとも。
「俺は……ずっと、顔も覚えていない親を憎んでいたかもしれない」
どうして自分を生んだのか。
そして何故いなくなったのか。
訊きたくても訊けなくて、憎んでいたのかもしれない。
けれど。
「そうだな。せめて俺だけでも信じてやらないとな」
「……うん、そうだね」
頷いてから、隼は調子を変えて続けた。
「それにしても、神崎君って取っ付きにくい人かと思ってたけど。実は優しい人なんだね」
「はあ?」
「そんな君なら会えると思うよ。いつか……」
安らぎをくれる人に。
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