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「本当に……貴女には敵わない勇君の気持ちが分かりますよ」

組んでいた足を解き、ひかりの方に真剣な瞳を向けて続ける。

「記憶の取り戻し方については、自然に思い出すより無いとしか言えません。他に……催眠術のようなものを使う方法もありますが、私には出来ませんし……。何よりそうして思い出しても、貴女の為になるとは思えません」

「そうですか……」

ひかりは目を伏せ、紅茶のカップに口を付けた。

「でもいずれ、何か切っ掛けがあれば、きっと思い出せるでしょう。ほんの些細な事でも、何か切っ掛けがあれば」

「ええ。有り難うございます」

頭を下げて、ひかりが立ち上がる。

「すみませんね……。あまりお役に立てなくて」

小さく白い手からカップを受け取りながら宴が言うと、ひかりは慌てて首を振る。

「私こそ、お仕事中なのに突然来て、変な事を聞いてごめんなさい」

「いえいえ、構いませんよ。またお越し下さい」

ひかりが再度頭を下げて部屋を出ようとした時、宴は声を掛けた。

「近い内に、最善の仕方で記憶が戻る事を願っていますよ」

「有り難うございます」

微笑と何度めかのお礼の言葉を残し、保健室の引き戸が閉まる。

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