08


子供達が遊ぶ姿を眺めながら、勇と誠は運動場の隅にあるベンチに並んで座っていた。

「お前が此処に来たのは、今から10年程前の雨の夜でした」

誠は前を見たまま、静かに語り始めた。

「私はまだ此処に勤め始めたばかりで、他の子供達を寝かせた後もしばらく起きて仕事をしていたんです」

勇と同じように両親がおらず、この施設で育った誠はその頃から此処で住み込みで働いていたのだろう。

「その時、お前を抱えた人がやって来て……この子を預かってほしいと」

「俺を……」

そう言って来た人は親だったのだろうか。

それとも別の誰かだったのだろうか。

誠は当時を思い出すような遠い瞳で続けた。

「お前は気を失っていて、気が付いた時には記憶を失っていました」

思わず息を飲む。

此処に連れて来られた時、自分は記憶を無くしていた。

ひかりのように。

「お前が覚えていたのは自分の名前だけで、それ以外はショックからか何も言わなかった。唯一話したのは、ひかりという言葉だった」

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