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部屋の隅でうずくまる小さな影に向かって引き金を引いた時、護衛の二人がその前に飛び出した。

銃弾を受けて傷を負いながらも、揺らがない瞳が真っ直ぐに見据える。

「その子には手を出すな!俺達さえ殺れば充分だろう!」

白衣を着た父親が、息子を庇うように叫んだ。

その腕の中で、妻も無言で見返して来た。

「……忘れないで……。いつかきっと、貴方も光に会えるから……」

荒く息をつく護衛の女性が口を開く。

彼女を支える男も、何故か案じるような瞳を向けていた。

この状況で、恨むのではなくひたすら静かで。

そして、真摯な瞳を。

「信じる事を恐れるな……」

雷が鳴った。

感情を捨てて機械的に動きながらも、これまでとは何かが違った。

仕事ならば何も感じず、痛みも覚えず。

幾人もの命を奪って来たそれまでとは。

やがて訪れた静けさの中、激しい雨音だけが外から聞こえる。

雷光が閃き、赤が視界を埋め尽くす。

動かなくなった彼等を見た途端、何かが不意に心を動かした。

一体何がそうさせたのかは分からない。

ほとんど無意識の内に部屋の隅へ歩み寄る。

幼い子供は目の前で起こった出来事にショックを受けたのか、気を失っていた。

手を伸ばし、抱き上げる。

そのまま外へ出て、嵐の中を駆けた。

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