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尋ねるようにひかりを見ると、頷きが帰って来た。
「うん。私はあそこを通って時を越えたの」
「……よくあんな、ガラクタっぽい装置を信じたな」
「あの時は必死だったし、そんな事考えられなかったの。それに」
ひかりはガラスの前を離れて歩き出しながら付け足す。
「会いたかったから。どうしても」
「…………」
未来から来た少女の後ろ姿を見詰めたまま、思わず黙り込む。
不意打ちは狡いと思うけれど。
何気無く掛けられる言葉が、どうしようも無く嬉しい。
「あ、あった。勇、来て」
部屋の中を歩いてデスクや資料棚を確認していたひかりが、振り向いて呼んだ。
「どうしたんだ?」
近付いて尋ねると、分厚い書類の束を手渡される。
「勇のご両親による研究データ。何処かに残ってると思ったの」
「俺の両親の……?」
繰り返して紙面に目を落とすと、確かに神崎と付く二人の名が並んで記されていた。
「とても優秀な研究者だったんだよ。そのデータを元に改良が加えられたから、私も無事に時を越えられたんだと思うし」
ガラスの向こうの装置に目を向けながら、ひかりは続ける。
「それに、ご両親は権力に屈しなかった。間違っているやり方に反対し、それ以上研究への協力を拒んだ。だから命を狙われる事になっても、決して信念は揺らがなかった。誇るべきご両親だね。そして、貴方はそんなお二人に大切にされていたんだよ」
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Reservoir Amulet