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このままでは話がこじれるばかりなので、勇は缶の蓋を拾い上げて机の上に乗せながら言う。
「あの黒い養護教諭が言ってただろ。精神的にダメージを受けて記憶を無くす事もあるって。お前が無くした記憶は、忘れたいと願う程辛いものかもしれないんだ。忘れて楽しく暮らせてるなら、それで良いだろ」
「でも、だからって逃げてるだけじゃ駄目だと思うの。私は……」
目を伏せて、ひかりは言葉を途中で止めた。
そんなひかりの頭をぽんと叩いて、勇が自分のカップを手に立ち上がる。
「まあ、あんまり無理するなよ。俺の事で、お前が苦しむ必要は無いんだからな」
勇がそう言い残して台所の方に行ってしまうと、ひかりは軽く息をついた。
「もう、どうしていつも、何も話してくれないのかな……」
どうしていつも、あんなに寂しそうな瞳を。
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Reservoir Amulet