08


日がすっかり暮れて闇が辺りを覆っても、まだ雨は降り続いていた。

傘を叩く雨の音以外、何も耳に入らない。

アパートが見えて来て、勇は足を止めた。

その前に、傘を差してひかりが立っていたからだ。

何と言おうか考えあぐねていると、ひかりの方も勇に気付いて口を開いた。

「あっ、お帰りなさーい」

能天気な声に一瞬力が抜けたが、気を取り直して尋ねる。

「お前、何をしてるんだ」

「勇を待ってたの」

ひかりは事も無げにそう答えた。

頭痛を覚え、勇はこめかみの辺りに手を添える。

「だったら、家の中で待ってればいいだろうが」

アパートはすぐ側なのである。

何もこんな雨の日に外に出て待っている必要は無い。

「だって、外の方が早く会えるし。勇にお客様が来たから」

「は、客?」

そんな事は今までに無い事だった。

勇が思わず間の抜けた反応をすると、ひかりが腕を取ってじれったげに言う。

「そう。早く早く」

ひかりに腕を引っ張られて階段を上がり、ドアを開ける。

リビングに入る所で、勇は立ち止まった。

そこに座ってお茶を飲む人の姿を見て、その場に立ち尽くす。

- 88 -






[*前] | [次#]

しおりを挟む


ページ:



Reservoir Amulet