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「……ええと。つまりエンデュミオさん、とお呼びして良いんでしょうか」

「ああ」

頷いた後、その表情には苦しみが混ざった。

「私のせいで貴女に辛い思いをさせて、申し訳無い」

そう詫びてから、更に続ける。

「そして貴女には、これからもっと辛い役目を頼む事になる」

「え?」

見返したセレネの前に、銀色に光る短剣が差し出された。

「これで私を殺してほしい。貴女の見た、吸血鬼を」

何と返せば良いのか分からなかった。

真剣な瞳を見詰めたまま、息をする事すら忘れて立ち尽くす。

「……私が、あの人を?」

やがて口から出て来た声は、力無く震えて弱々しかった。

その様子を見て、エンデュミオは静かに語り出す。

「セレネ。私は人の血を啜りながら、果てしない時を生きた。生まれ落ちた理由も生きる意味も、長い時の螺旋に飲まれてとうに消えた」

淡々と話す深い声。

そこに在るのは、底の見えない深い哀しみ。

「日が昇れば、体は勝手に眠りにつく。そして夜になれば、血に飢えて命を奪う。高過ぎる治癒能力を持つ故に、自ら死ぬ事も出来ない」

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