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一体どれ位の時を、彼は苦しみながら生きて来たのか。

それは想像も及ばない、生の永獄【えいごく】だ。

「しかし、そんな私にも唯一の希望があった。眠りが訪れる間に見る夢があった。いつか私の最後を歌う、旅の歌人が現れると」

セレネは思わず息を飲んだ。

以前森で話した時の、彼の反応を思い出す。

旅の歌人と呟いた途端、苦しみながら距離を取った。

彼は、やはり。

「どれだけの時を待ち続けたかは分からない。でも、ずっと待っていた。そして、貴女が現れた」

「私、が……」

「心優しい貴女を、きっと傷付ける事になる。こんな辛い役目を負わせるのは、本当に申し訳無く思う。しかし、貴女にしか頼めないのだ。森の霧に惑わず城に辿り着いた貴女にしか」

潰されてしまいそうな程、胸が苦しい。

見詰める真紅の瞳が、語る声が。

何処までも静かで優しいから、尚更。

「血を求める衝動を、私は可能な限り抑えようとして来た。だが、もう限界だ。いずれ私は血に狂うだろう。自分自身を失い、ただの魔物となり果てる」

森の中で垣間見た、エンデュミオの発作。

あれは、血を求めていたのか。

自分自身を失う位に。

あの時もきっと、本能に支配されそうになりながら。

それでも衝動を抑えて立ち去ったのだ。

その上、こちらの事まで気遣って。

彼は、やはり。

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