12


気が付くと、現実の光景が広がっていた。

廃城の階段、娘の血を啜る吸血鬼。

今のは、夢でも見ていたのだろうか。

そう思ったが、もう一人のエンデュミオから渡された銀の短剣は確かに手に握られている。

これで彼を貫く事が、救いとなる。

しかし、それしか道は無いのだろうか。

それ以外に、道は。

セレネが見る中で、血を吸い尽くされた娘の体が音も無くくず折れる。

そして少しずつ灰となり形を無くし、やがて夜風に舞い消えた。

それをじっと見詰めていた赤い瞳が、こちらに向けられる。

「……来てしまったのか、セレネ。気付く前に旅立ってくれればと思っていたが」

「エンデュミオ、さん……」

あんな光景を見たばかりだというのに、何故だろう。

危険な光を放つ真紅の瞳も。

広がる大きな漆黒の翼も。

血が付いた口元に生えている牙も。

全てが彼の本当の姿を示しているのに、何故だろう。

人の血を飲み命を奪って生きて来た吸血鬼だと分かるのに、何故だろう。

胸を占めるのは、恐怖や憎しみの感情ではない。

- 32 -







[*前] | [次#]

しおりを挟む


ページ:



Reservoir Amulet