04
出会った時はまだ、お互いに昔の事は知らないままで。
どうしてこんなに惹かれ合うのか、分からないままだった。
思い出したのは、初めて口付けを交わした瞬間だった。
心の奥深く、魂の奥底が不意に激しく揺さぶられた。
体を濡らす霧、湿った夜風、淡い月光。
刃の冷たさ、頬を伝う涙、赤く染まる服。
そして、血塗れた口付け。
様々な光景が脳裏に浮かんだ。
見た事も無い、知らない筈なのに覚えている。
かつて遠い時の向こうを生きた自分達の、別れ。
ずっと持っていた古ぼけた剣の意味を、口ずさんでいた歌の意味を悟った。
「刺された時に貴女の記憶が流れ込んだ。あの短剣を託した者からの伝言も。だから力を剣に込めた。昔の私には人ならざる力があったからな」
「その力で、今の貴方が夢を通して時の向こうの私に会ったのね。剣を託す為に」
「ああ。……辛い役目を負わせてしまう事になるが」
「それでも、悔やんだりはしないでしょう。私は」
繋いでいた手をそっと放し、花を摘みながら続ける。
「確かに辛くて、思い出す度に苦しくなる記憶ではあるけれど。でも、その先にこんな未来が待っているのなら。貴方が救われたのなら。昔の私も幸せだったわ、絶対に」
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Reservoir Amulet