08


部屋まで荷物を運ぶ時も、彼は手伝ってくれた。

バッグを受け取った際に手が触れ合って、一瞬懐かしさを覚えて。

そんな自分に罪悪感があった。

まだ断ち切れてはいないのか。

とうに終わった事だというのに。

この人は、どんなに似ていても別人なのに。

重ねていては、余計に傷付けてしまう。

彼自身、兄である存在に似ている事に、似過ぎている事に悩んでいると知っているから。

彼は、あの人ではない。

最初は、自分にそう言い聞かせていた。

けれど一緒に過ごす内に、彼自身のいいところや素敵なところが見えて来て。

それが幾つも、数え切れない程に心に降り積もったから。

重ねる事など、いつしか出来なくなっていた。

直接伝えるのは無理でも、分かってほしくて。

「だから俺は、君にも笑ってほしいと思うんだ」

何処か寂しくて、でも優しい微笑み。

「ただ、優しいなあって思ってさ」

そう言った貴方に、本当は伝えたかった。

嫌いなんて言葉じゃなくて、本当は。

優しいのは、本当に優しくて哀しいのは貴方だと。

寂しい時に、無理に笑わないで。

私なんかに、優しくしないで。

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