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今、改めて思う。

あの優しさは、本物だと。

お互いに、多くを語り合った訳じゃない。

胸の奥底に秘める本当を、分け合った訳じゃない。

そんな形だけの、表面だけのパートナーだとしても。

僅かであろうと、分かる事もある。

失われて欠けた傷。

そこがいつまでも欠けたまま、疼くから。

同じ傷を負った者の、声にならない声が響く。

あの笑顔の裏で、一体どれだけのものを失い諦めて来たのだろう。

仮初の関係で構わない。

傷口を舐め合うように、側にいるだけでも。

自分を偽物と信じて疑わない人だからこそ。

本当の望みを、いつか手に入れられるまで。

彼が、彼の信じる本当に辿り着けるように。

せめて自分だけは信じ続けよう。

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