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決意を込めて顔を上げた時、隣から壁をノックするような音がした。
続いて、声が聞こえて来る。
「華原さん、もう寝ちゃった?」
「いいえ。どうかなさいましたか」
隣の部屋とはいえ、壁越しに会話出来てしまうというのは問題ではないだろうか。
独り言にも気を付けなくては。
そう思いつつ、壁の方へ歩み寄る。
「あのさ、君は」
向こう側の至聖は、少し躊躇うように言葉を切ってから言った。
「今でも兄貴のこと、好きなのかな」
「……っ」
思わず息を飲んだのが伝わったのか、至聖の声が焦った響きを帯びる。
「ごめん、無理に答えなくてもいいんだ。ただ、もしそうなら……此処にいたら君は傷付くだけなんじゃないかって」
少し前にこう言われたら、貴方には関係無いの一言で済ませてしまっただろう。
けれども、今は違うから。
少しだけでも、変わったから。
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Reservoir Amulet