08


軽い冗談で、笑って済ませるつもりだったのに。

まだ彼女の唇の感触が消えない。

支部の小さな駐車場まで出て来た至聖は、大きく息を吐いた。

『不思議な人ですね、五十嵐さんって』

お互いに少しだけ心を明かした夜から、まだ数時間しか経っていなくて。

目覚めた後、あれは夢かもしれないと思ったりもして。

けれど、ちゃんと現実だったのだ。

『……もう、終わった事ですから』

そう言った真宵の声も、まだ耳に残っている。

だからこそ、自分に出来る事をしなければ。

自分の感覚さえ正しければ、きっと近い内に再び会う。

背を向けて諦めてばかりいた理由に、今こそ向き合って。

決着をつけなければ。

何よりも、自分自身に。

至聖は再び大きく息を吐くと、決意を胸に顔を上げた。

始めよう、戦いを。

侵蝕には、侵蝕を。

こちらから仕掛ける。





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