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「帰って来て下さい、絶対に」

そう言って見上げた張り詰めた瞳に、少なからず驚く。

いつも冷静な彼女に、こんなに縋るような眼差しを向けられたのは初めてだった。

少し考えて、すぐにその理由は分かったけれど。

寂しくて切ない、その理由を。

だから、至聖は微笑んで告げた。

「大丈夫だよ。ちゃんとこまめに連絡を入れるから」

「本当ですね?」

「勿論」

「またキスした方がいいのなら、しますけど」

「それはもういいから!」

慌てて手を振って答えると、真宵は気遣わしげに言った。

「お帰りを、お待ちしています」

こんなに暖かな言葉を貰っても、心から笑えない自分が悔しいけれど。

それでも、不安を少しでも拭えるように。

「……行って来ます」

次に会う時も、嘘でも笑っていられたらいい。

望みはいつも、一つだけなのだから。





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