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目が逸らせなかった。
「至高さん」
久し振りに名前を呼ばれた。
騙し傷付けた事に、恨み言でもあるのだろうか。
そう思って見返した時、その瞳から涙がこぼれた。
「有り難うございました」
「……っ」
涙を流しながら、それでも真宵は微笑んでいた。
「貴方のこと、私はほんの少ししか分かっていませんでした。それでもほんの一時、貴方の恋人でいられた事を幸せだと思います」
泣いてくれるのか。
こんな偽物の自分の為に。
その涙を見て、ふと思い出した。
あれは彼女と初めて会った日の事。
そして二人重ねた時の事。
懐かしい、暖かな記憶。
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Reservoir Amulet